住民税の決定通知書は、前年1年間の所得から所得控除を差し引き、税率を掛けて税額控除を引き、均等割を足すという順番で計算した結果が書かれた書類です。まず「年税額」と「毎月の天引き額」、次に「税額控除」の欄を見ると、1年間に払う住民税と、ふるさと納税などの控除が入っているかが分かります。この記事では、令和8年度(2026年度)の通知書を例に、各項目の意味と税額の計算方法を、年収500万円の会社員の計算例で説明します。

通知書の種類と届く時期

住民税の通知書は、税金の納め方によって名前と届き方が違います。

納め方主な対象通知書届く時期・届き方
給与から天引き(特別徴収)会社員・公務員など特別徴収税額の決定通知書(納税義務者用)5〜6月ごろ、勤務先から受け取る
自分で納付(普通徴収)自営業、退職した人など納税通知書6月ごろ、自宅に郵送される。年4回に分けて納めるのが一般的
年金から天引き65歳以上で年金を受け取っている人など納税通知書(年金からの徴収額が書かれる)6月ごろ、自宅に郵送される

住民税は前年の所得にかかる税金です。令和8年度(2026年度)の住民税は、令和7年(2025年)1月〜12月の所得をもとに計算され、2026年6月から2027年5月まで納めます。通知書の名前は「市民税・県民税」「特別区民税・都民税」など住所地によって違いますが、中身の考え方は同じです。令和6年度からは、国の森林環境税(1人年額1,000円)も住民税と一緒に納めるため、通知書に「森林環境税」の欄があります。

通知書の各項目の意味

ここでは、会社員が受け取る特別徴収の通知書を例にします。実際の様式は市区町村によって違いますが、書かれている内容はおおむね次の6つに分けられます。

住民税の特別徴収税額決定通知書の模式図。①年税額243,500円と月割額(6月21,300円、7月以降20,200円)、②給与収入500万円と給与所得356万円、③社会保険料72万円・基礎控除43万円など所得控除合計115万円、④課税標準241万円、⑤市区町村民税と道府県民税の算出所得割額・税額控除額・所得割額・均等割額と森林環境税、⑥摘要欄に番号を付けて示している
特別徴収税額決定通知書の主な欄(模式図)。数値は次の章の計算例です。実際の様式や項目名、並び順は市区町村によって異なります。画像を選ぶと拡大できます。
番号欄意味確認のしかた
①特別徴収税額(年税額)・月割額1年間に納める住民税の合計と、6月から翌年5月までの毎月の天引き額給与明細の住民税の天引き額と一致するか
②収入・所得前年の給与収入(額面)と、給与所得控除を差し引いた給与所得。副業などの所得があれば合計した総所得金額も書かれる源泉徴収票の「支払金額」「給与所得控除後の金額」と同じか
③所得控除社会保険料控除、生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除など、所得から差し引く金額社会保険料は源泉徴収票の「社会保険料等の金額」と同じか(iDeCoなどの掛金がある場合は、小規模企業共済等掛金控除との合計と比べる)。扶養している家族が反映されているか
④課税標準所得から所得控除を差し引いた、税率を掛ける元の金額(1,000円未満切り捨て)②−③で計算できる
⑤税額算出所得割額(課税標準×税率)から税額控除を引いた所得割額と、均等割額、森林環境税。市区町村民税と道府県民税に分けて書かれる税額控除にふるさと納税や住宅ローン控除が入っているか
⑥摘要控除の内訳や、税額の計算に関するお知らせふるさと納税の控除額が書かれていることがある

所得控除の金額が源泉徴収票と違う理由

③の所得控除は、源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」と一致しないのが普通です。住民税と所得税では控除の金額が一部違うためです。例えば基礎控除は、住民税では43万円ですが、所得税(令和7年分)では多くの人が所得に応じて58万〜95万円です。生命保険料控除も、住民税の上限は7万円で、所得税の上限12万円より小さくなっています。社会保険料控除は住民税と所得税で同じ金額になります。

住民税の計算方法(年収500万円の会社員の例)

次の条件で、令和8年度の住民税を計算してみます。数値は説明用の架空の例です。

  • 2025年の給与収入:500万円(給与以外の所得はなし)
  • 社会保険料:72万円、生命保険料の支払い:なし
  • 独身で扶養している家族はいない。ふるさと納税などの寄附はなし
  • 住所地の税率は標準税率(市区町村民税6%、道府県民税4%)
手順計算金額
1. 給与所得給与収入500万円 − 給与所得控除144万円(500万円×20%+44万円)3,560,000円
2. 所得控除社会保険料控除72万円 + 基礎控除43万円1,150,000円
3. 課税標準3,560,000円 − 1,150,000円(1,000円未満切り捨て)2,410,000円
4. 算出所得割額2,410,000円 × 10%(市区町村民税6%:144,600円、道府県民税4%:96,400円)241,000円
5. 税額控除調整控除2,500円(市区町村民税1,500円、道府県民税1,000円)2,500円
6. 所得割額241,000円 − 2,500円(市区町村民税143,100円、道府県民税95,400円)238,500円
7. 均等割額など市区町村民税3,000円 + 道府県民税1,000円 + 森林環境税1,000円5,000円
8. 年税額238,500円 + 5,000円243,500円

調整控除とは

調整控除は、所得税と住民税で基礎控除などの人的控除の金額が違うために、住民税の負担が重くなりすぎないように差し引かれる控除です。合計所得金額が2,500万円以下の場合に適用され、2,500万円を超える場合は適用されません。適用対象で住民税の課税標準の合計が200万円を超える人は、控除の差の合計額(独身で扶養家族がいない場合は5万円)から、200万円を超えた分を引いた金額の5%が控除されます。計算結果が5万円を下回る場合は5万円として計算するため、適用対象なら最低でも2,500円が差し引かれます。この例では5万円 −(241万円 − 200万円)がマイナスになるため、2,500円です。

税率や均等割が違う地域

政令指定都市では、所得割の税率が市民税8%、道府県民税2%に分かれます(合計は10%で同じです)。また、均等割に独自の金額を上乗せしている都道府県や市区町村もあります。通知書の税額がこの計算と少し違う場合は、住所地の税率を確認してください。

毎月の天引き額と、6月だけ多い理由

給与から天引きされる住民税は、年税額を6月から翌年5月までの12回に分けて納めます。年税額を12で割ったときの100円未満の端数は、最初の6月分にまとめられるのが一般的です。

計算例の年税額243,500円なら、12で割ると20,291円余りです。100円未満を切り捨てた20,200円が7月〜翌年5月の11か月分になり、6月分は243,500円 − 20,200円 × 11 = 21,300円です。6月の給与明細だけ住民税が多いのはこのためです。

年の途中で退職した場合は、残りの住民税を最後の給与からまとめて差し引くか、自分で納める普通徴収に切り替わります。転職先で引き続き天引きしてもらえる場合もあるため、退職時に勤務先に確認してください。

去年と比べて住民税が変わったとき

前年度の通知書と並べて、②〜⑤のどこが変わったかを見ると原因を特定しやすくなります。よくある理由は次のとおりです。

  • 前年の所得が増えた:昇給や賞与の増加、副業の収入などで②が増えると、翌年度の住民税が上がります。就職2年目に住民税の天引きが始まったり、大きく増えたりするのもこのためです。
  • 所得控除が減った:扶養していた家族が扶養から外れた、医療費控除を申告しなかったなどの理由で③が減ると、税額が上がります。
  • 税額控除が変わった:住宅ローン控除の期間が終わった、ふるさと納税の金額が変わった、ふるさと納税が反映されていないなどの理由で、⑤の税額控除が変わります。
  • 引っ越した:住所地によって均等割の金額や税率が違う場合があります。住民税は1月1日に住んでいた市区町村で課税されます。

通知書の内容が正しいか確認する方法

手元にある次の書類と照らし合わせると、多くの項目は自分で確認できます。

  1. 源泉徴収票:前年の給与の「支払金額」が②の給与収入と一致するかを見ます。「社会保険料等の金額」にiDeCoなどの掛金が内書きされている場合は、その内書きを差し引いた額を③の社会保険料控除と比べ、内書きは小規模企業共済等掛金控除と比べます。内書きがない場合は「社会保険料等の金額」と社会保険料控除を比べます。扶養の人数も確認します。
  2. 確定申告書の控え:確定申告をした場合は、医療費控除や副業の所得などが③や②に反映されているかを確認します。
  3. ふるさと納税の寄附金受領証明書:寄附の合計額から、住民税でどのくらい控除されるはずかを計算して、⑤の税額控除や⑥の摘要と比べます。詳しくはふるさと納税が住民税に反映されているか確認する方法で解説しています。

間違っていそうなときの問い合わせ先

通知書の内容に疑問がある場合は、通知書に書かれている市区町村の住民税の担当課(市民税課、課税課など)に問い合わせます。通知書を手元に用意し、どの欄の金額がどう違うと思うかを伝えると話が早く進みます。

会社員の場合、住民税は勤務先が市区町村に提出した給与の情報(給与支払報告書)をもとに計算されます。年末調整で扶養や保険料の申告が漏れていた、勤務先の提出内容に誤りがあった、といった原因なら、勤務先の担当者に確認します。控除を申告し忘れていた場合は、確定申告や住民税の申告をすることで、あとから控除を反映できることがあります。手続きの方法は市区町村に確認してください。

この記事の前提と参考資料

この記事は、2026年9月時点の制度にもとづく令和8年度(2026年度)の住民税の一般的な説明です。税率や控除の金額は税制改正で変わることがあり、通知書の様式や端数の扱いは市区町村によって異なります。実際の税額や手続きは、お住まいの市区町村の案内で確認してください。