印刷した画像が粗く見えるのは、多くの場合、印刷する大きさに対して画像のピクセル数(画素数)が足りないためです。必要なピクセル数は「印刷サイズ(mm)÷ 25.4 × dpi」で計算できます。例えばA4サイズを350dpiで印刷するには、約2,894 × 4,093pxが必要です。画像の設定でdpiの数値だけを72から350に変えても、画質は良くなりません。
印刷すると粗くなる原因
デジタル画像は、縦横に並んだ小さな点(ピクセル)の集まりです。画面で見るときも印刷するときも、画像に含まれるピクセルの数は変わりません。変わるのは、そのピクセルを紙の上でどれだけの大きさに広げるかです。
同じ1,200 × 800pxの画像でも、幅87mmで印刷すれば1インチ(25.4mm)あたり約350ピクセルが並びます。一方、A4横の幅297mmまで広げると、1インチあたり約103ピクセルしかありません。1つ1つのピクセルが大きく印刷されるため、輪郭がギザギザになったり、全体がぼやけて見えたりします。
この「1インチあたりに並ぶピクセルの数」を表すのがdpi(またはppi)です。つまり、印刷時の細かさは画像のピクセル数と印刷サイズの組み合わせで決まります。
必要なピクセル数の計算方法
印刷に必要なピクセル数は、印刷する長さをインチに直してdpiを掛けると求められます。1インチは25.4mmです。
必要なピクセル数 = 印刷する長さ(mm)÷ 25.4 × dpiA4(210 × 297mm)を350dpiで印刷する場合は、次のようになります。
- 幅:210 ÷ 25.4 × 350 ≒ 2,894px
- 高さ:297 ÷ 25.4 × 350 ≒ 4,093px
反対に、手持ちの画像でどのくらいの大きさまで印刷できるかは「ピクセル数 ÷ dpi × 25.4」で分かります。1,920 × 1,080pxの画像なら、350dpiで約139 × 78mm、300dpiで約163 × 91mmまでが目安です。
何dpiを目安にすればよいか
写真やカラーのチラシなどを印刷会社へ入稿する場合は、300〜350dpiを目安として案内されることが一般的です。モノクロの線画や文字だけの原稿では、600dpi以上を求められることもあります。ポスターのように離れて見るものは、これより低くても気にならない場合があります。入稿先や提出先に指定がある場合は、その指定を優先してください。
用紙サイズ別に必要なピクセル数の目安
よく使うサイズで、300dpiと350dpiに必要なピクセル数をまとめました。縦横の向きは画像に合わせて読み替えてください。小数点以下は切り上げています。
| サイズ | 寸法 | 300dpi | 350dpi |
|---|---|---|---|
| 名刺 | 91 × 55mm | 1,075 × 650px | 1,254 × 758px |
| L判(写真) | 89 × 127mm | 1,052 × 1,500px | 1,227 × 1,750px |
| はがき | 100 × 148mm | 1,182 × 1,749px | 1,378 × 2,040px |
| 2L判(写真) | 127 × 178mm | 1,500 × 2,103px | 1,750 × 2,453px |
| A5 | 148 × 210mm | 1,749 × 2,481px | 2,040 × 2,894px |
| B5 | 182 × 257mm | 2,150 × 3,036px | 2,508 × 3,542px |
| A4 | 210 × 297mm | 2,481 × 3,508px | 2,894 × 4,093px |
| A3 | 297 × 420mm | 3,508 × 4,961px | 4,093 × 5,788px |
計算結果の小数点以下を切り上げているため、四捨五入した値を使う資料とは1ピクセル違うことがあります(例:A4・300dpiは四捨五入すると2,480 × 3,508px)。1ピクセルの差は印刷結果にはほとんど影響しません。A4のピクセル数をWeb・PDF向けの値も含めて確認したい場合は、A4サイズは何ピクセル?dpi別の早見表を参照してください。
フチなし印刷や、印刷会社で塗り足しが必要な場合は、その分だけ印刷サイズが大きくなります。塗り足しの幅は入稿先の案内を確認してください。
手持ちの画像が足りているか確認する
まず画像の縦横のピクセル数を確認し、上の表や計算式と比べます。画像情報確認ツールで画像を選ぶと、ピクセル数、記録されているdpi、300dpi・350dpiで印刷できる大きさの目安をまとめて表示できます。パソコンの機能で確認する場合は、次の方法を使います。
- Windows:画像ファイルを右クリックして[プロパティ]を開き、[詳細]タブの「大きさ」または「幅」「高さ」を確認します。
- Mac:Finderで画像を選び、[ファイル]→[情報を見る]を開いて、「詳細情報」の「大きさ」を確認します。
例えば、スマートフォンで撮影した4,032 × 3,024pxの写真は、350dpiで約293 × 219mmまで印刷できます。A4(297 × 210mm)の横向きなら約345dpiになり、ほぼ目安どおりです。一方、SNSやWebページから保存した1,200px程度の画像を大きく印刷すると、ピクセル数が足りなくなりがちです。
画像の一部を切り抜くと、その分ピクセル数も減ります。切り抜いてから印刷する場合は、切り抜き後のピクセル数で確認してください。
dpiの数値だけ変えても画質は変わらない
画像ファイルには「72dpi」「350dpi」といった数値が記録されていることがあります。これは「この画像を何dpiで印刷するか」という指定の値で、画像に含まれるピクセルそのものではありません。数値だけを72から350に変えても、ピクセル数は変わらず、印刷したときの細かさも変わりません。変わるのは、そのまま印刷したときの大きさ(印刷サイズ)だけです。
WindowsのプロパティやMacの情報画面で「72dpi」と表示される画像でも、ピクセル数が十分あれば350dpiでの印刷に使えます。反対に、350dpiと記録されていてもピクセル数が少なければ、大きく印刷すると粗くなります。
提出先から「350dpiの画像」を求められたら
まず、必要な印刷サイズに対してピクセル数が足りているかを確認します。足りている場合は、提出先の確認方法に合わせて、画像編集ソフトでdpiの数値だけを変更することがあります。例えばPhotoshopでは[イメージ]→[画像解像度]で[再サンプル]のチェックを外してから解像度を変更し、GIMPでは[画像]→[印刷サイズ]から変更します。どちらもピクセル数を変えずに、記録される数値と印刷サイズだけが変わります。
[再サンプル]がオンのまま数値を上げると、ソフトが画像を拡大してピクセル数を増やします。ピクセル数は増えますが、元の画像にない細部は増えないため、ぼやけた印象は残ります。
ピクセル数が足りないときの対処
- 元の画像を探す:撮影した元データや、縮小される前のファイルが残っていないか確認します。SNSやメッセージアプリを経由した画像は、送信時に縮小されていることがあります。
- 印刷サイズを小さくする:ピクセル数が同じでも、小さく印刷すれば1インチあたりの画素が増えます。上の計算式で、手持ちの画像がきれいに印刷できる大きさを確認します。
- AIで拡大する:どうしても大きく印刷する必要がある場合は、超解像AIで拡大すると、普通に拡大するより文字や輪郭がくっきりします。
画像の解像度を上げるツールでは、画像を2倍・4倍に拡大できます。例えば1,024 × 724pxの画像を4倍にすると4,096 × 2,896pxになり、A4横を350dpiで印刷できるピクセル数になります。ただし、AIは画素を推定して描き足すため、元の画像に写っていない細部を正確に復元できるわけではありません。4倍ではとても小さな文字の形が崩れることもあるため、拡大後の画像を必ず確認してください。また、処理できる画像の大きさには上限があります。WebGPUが使えない端末では処理できる大きさがさらに小さくなり、スマートフォンなど一部の端末では4倍を選べない場合もあります。
反対に、画像が必要以上に大きく、メールやアップロードで容量が問題になる場合は、印刷に必要なピクセル数を下回らない範囲で縮小できます。複数の画像をまとめて縮小するなら画像一括リサイズツール、容量を指定して小さくするなら画像圧縮・リサイズツールを使います。
dpi・ppi・解像度の違い
| 用語 | 意味 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| ピクセル数(画素数) | 画像を構成する点の数。例:4,032 × 3,024px | 画像そのものの情報量。画質の土台になる |
| ppi | 1インチあたりのピクセル数(pixels per inch) | 画像を印刷する細かさ、画面の細かさ |
| dpi | 1インチあたりのドット数(dots per inch) | 本来はプリンターが打つインクの点の細かさ。入稿案内や画像編集ソフトでは、ppiと同じ意味で使われることが多い |
| 解像度 | 文脈によって「ピクセル数」と「dpi・ppi」のどちらも指す | 「解像度1920×1080」はピクセル数、「解像度350dpi」は細かさの意味 |
入稿案内の「画像解像度350dpi」は、通常「実際に印刷する大きさで、1インチあたり350ピクセルあること」を意味します。プリンターの仕様にある「4800dpi」などはインクの点の細かさなので、画像のdpiとは別のものです。